模像殺人事件／佐々木俊介／東京創元社

読んでいる最中、二人の作家の名が頭に浮かんでいた。一人は横溝正史。そしてもう一人は、飛鳥部勝則である。横溝に関しては、何箇所かで想い出すと云った感じだったのだが、飛鳥部に関してはほぼ終始、脳裏に浮かびっ放しだった。文章の質は異なるが、世界観や登場人物の雰囲気、それに物語の運びなどに、かなり近いものを感じたのだ。或いは、エッセンスの問題かも知れない。ただ、締め括り方は明らかに違う。詳述するとネタを割ってしまうのでここでは避けるが、僕はそのどちらの終わり方も好きだ。いや、どちらにしてもあまり気持ちのいいものではないのかも知れないが。それでも、しかし――。
と、他の作家と比べてばかりで申し訳ない。素直に、この素晴らしさを受け止めたいと想う。去年読んでいたら、ミステリーの年間ベスト3に入れてもおかしくないくらい面白かった。『繭の夏』って、どんな感じなのかなぁ。読みたい、気がしている。ところで、「装画」の木下恵介って、あの映画監督の木下恵介？　それとも、同姓同名の別人？