chronic life

I can (not) have relations.

11の物語/パトリシア・ハイスミス/ハヤカワ文庫HM

僕の勝手な偏見なのでしょうが、海外の小説を読む時にいつも感じてしまう微妙な違和感のようなものがあって、それを取り去るのに大抵50頁は読み進める必要があったりするのですが、最初の一文からその違和感を全く感じることがなかったと云うことだけでも、この小説は僕にとって特別なものでした。いい意味で、日本の作家さんの小説を読んでいるようでした。それだけ、性に合ったと云うことでしょう。
「かたつむり観察者」と「クレイヴァリング教授の新発見」のかたつむり譚二篇も気持ち悪くてとても良かったのですが、「すっぽん」「愛の叫び」「ヒロイン」「もうひとつの橋」「からっぽの巣箱」などの何とも云えない後味が非常に好みでした。それは多分僕が、かたつむりなんかより人間の方がよっぽど気持ち悪いと想っているからなのかも知れません。そういう気持ちを想い出させてくれたハイスミスさんに、心から感謝を。

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)