うーん。僕は唸った。しかしこれは、あまりの素晴らしさに言葉を失って、想わず唸ってしまったのとは、ちょっと違うような気がしている。何だか色んなことが近過ぎて、面白いかどうかなんて全く判らなくなってしまったような、そんな感じなのだ。そうか、俺って女子中学生だったんだ。
以下、あまりに個人的過ぎる内容なので、ネタバレではないですが隠します。小説の中身とは関係のないことなので、基本的にはスルー推奨。なら書くなって。
流石に死には至っていないが、僕も中学生の時、ある血の繋がった*1人物を殺し掛けたことがあった。方法は、彼女達が最初に試したものと似たり寄ったりだったが、確かにそこには殺意が存在していた。僕はしっかりと、バトルアックスを握り締めていたのだ。その人物自身も、彼女達の第一の被害者とよく似ていた。本当に、よく似ていた。また、下関でも島でもないが、僕は生まれてから高校を卒業するまで、ずっと山口県に住んでいた。そんな地名の僅かな一致など、取るに足らない、深い意味のないことだと、頭では理解している。しかし、心情的にはその僅かな一致に、どうしようもない引っ掛かりを覚えてしまうのだ。決して拭い去ることの出来ない、悪夢のような引っ掛かりを。他にも、他にも……。
僕にはとても、これを一フィクションとして受け流すようなことは出来ない。どうしようもない。本当に、どうしようもない。これは一体、誰の物語なんだ。
僕は今、サンボマスターを聴きながらこれを書いている。特に深い意味はない、訳ではない。かなり意図的なものである。しかしそのこととは全く関係なく、ただ一つ判っているのは、僕はまだ、巨大な迷路の中を彷徨っている最中だと云うことだけなのだ。
- 作者: 桜庭一樹
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*1:ここ重要