chronic life

地下室の屋根裏部屋で

暗黒館の殺人(下)/綾辻行人/講談社ノベルス

読了。上巻を読み始めて、約二週間――。その間に他の本も二冊ほど読んだけれど、漸くこの言葉を記すことが出来た。正直、結構感動している。一つの作品にこれほど時間を掛けた(掛かった?)のは、恐らく初めてなんじゃないだろうか。いや、いい意味で。
ネタバレに抵触してしまうかも知れないのを覚悟して書くと、僕がこの作品の中で非常に面白いと感じたのは、その視点の扱い方についてである。これは下手なやり方だと、正直興醒めしてしまうと云うか、「それじゃあ何でもアリじゃないか!」みたいな憤りを覚えてしまう可能性も充分あるけれど、この作品に関してはこれで良かったんだと想う。確かに多少冗長過ぎる部分はあっただろうけど、多分きっと、これはこの形だからいいんですよ。
それにしても、このネタの詰め込み具合と云うか、後半の畳み掛けは本当に半端ないなぁ。こんだけやったら、そりゃあ八年掛かるわ。「集大成」って言葉は伊達じゃないな、と。これまで、館シリーズでは『人形館の殺人』が一番好きだったんだけど、これはどうもそれを塗り替えたんじゃないかと想う。読み終わった直後だから、妙に昂揚しているだけじゃなければ。僕にはこの作品が、「素晴らしいミステリー」であるかどうかは判断出来ないけれど、「素晴らしい綾辻行人の小説」であることは間違いないと想う。厚さにへこたれず、最後までちゃんと読み通して本当に良かった。けどまぁ、もう少し短くてもいいとは想ったけど。

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)