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本格的 死人と狂人たち/鳥飼否宇/原書房ミステリー・リーグ

読了。変な話だなぁ、本当にもう(非常に褒めてます)。先ず最初に、これを長篇と取るか連作短篇と取るかと云う問題がある。第一の「変」である*1。普通に考えれば、それぞれ別の事件を扱っているし、中心人物も違うのだから、連作短篇集(或いは中篇集)となるのかも知れないが、ラストまで読み終えてみると、一概にそうとも云えないような気になってしまう。ま、長篇だろうが連作だろうが、変なものは変なのだが……。
「変」と云えば、第一講の「変態」は、そのものずばり変態の話である。増田米尊なる「変態」助教授が、凡てを引っ掻き回すのだ。やることなすこと全部変なのだが、事件の解決だけは妙に地に足が着いている感じで、ミステリーとしての破壊力はちと弱いか。いや、増田助教授のキャラの破壊力なら、非常に壊滅的なのだ。途中で披露されるフィボナッチ数列に関する考察なんざ、舞城以来の衝撃だったのだが。ま、作中の南刑事に敬意を表して、小声で「クレイジー」と呟いておこう。
第二講「擬態」の面白さは、何とも筆舌に尽くし難いものがある。先ず何より、擬態についての講義そのものが実に面白い。正に自分が大学生になってその場にいるような臨場感で、作中の生徒達と共に講義に参加することが出来るし、実際に挿入されるレジュメの出来もいい感じ。本当にA4とかにコピーして、ホッチキスで留めて持っておきたいほど。それに……多くは語れないが、アレは凄い。しかし、ここまで来ると最早、事件はオマケと云うか、大学の講義と試験みたいなもんで、どっちが重要かと云うと……あ、やっぱり試験の方が大事か? ん? とにかく、連作とするなら本作のベスト。
第三講「形態」のテーマ*2はクローン。しかし、そこはそれ。まともな話で終わる訳がない。もしかしたら、この作品が一番ネタバレせずに語るのは難しいかも知れない。個人的には、「そんなバカな!」と想うことが一番多かった一篇で、別にそれがマイナスな訳でもないのだが、本当の意味で「もうちょっとスマートに出来たんじゃないかなぁ」と想わないでもない。しかし、あのアレとかはかなり好きなのだが*3。それと、英訳とかしたら全然駄目だろうなぁ、とも想った。
「前期試験」を経ての補講「実態」に至っては、「おお、私の大好きなアレではないか!」と、快哉を叫ぶ心持ちになった。うーん、素晴らしい。しかし、これほど求心力のない謎と云うのも珍しい……と云うか、前代未聞じゃないだろうか。しかし、「本格的」ならこうじゃなきゃ。「本格」じゃないよ、「本格的」だよ。
それにしても今月は、鳥飼に始まり鳥飼に終わった月だったなぁ。何と豊饒なことだろうか! あー、書き過ぎた……。

本格的―死人と狂人たち (ミステリー・リーグ)

本格的―死人と狂人たち (ミステリー・リーグ)

*1:こんな偉そうに書くことでもないが

*2:そんな大袈裟なものではないが

*3:こんな書き方じゃ絶対伝わんないだろうけど