chronic life

地下室の屋根裏部屋で

アウトブリード/保坂和志/朝日出版社

猫と半日遊ぶことができるのは、人間としての成熟だと思う。ぼくはそういう人を読者として考えながら書いた。

読了。またしても、非常に感想の書き難い本を読んでしまった。と云うかそもそも、この本には一体どういうことが書いてあるのか、それすら巧く説明することが僕には出来ない。そんな訳なので、著者自身が「あとがき」でこの本について書いていることを、ちょっと長いけれど引用してみようと想う。

この本に入っている文章は、小説とはどういうものであり、小説家にとって小説を書くとはどういうことであり、小説が別種のディスクールを用意することができるとしたらそれはどういう手続きを経るのか(タイトルの“アウトブリード”はここからきている)、ということを極力“文学”という目眩ましと距離を置いて考えた痕跡であり、「ようやく自分で考えることをしはじめる」のはこの本の後ということになる。

当たり前だけれど、この一文は実にこの本の本質を突いていて、僕はこれ以上正確に、この本のことを説明することはとても出来ない。だから引用したんですけど。つまり、そんな本です。面白かったし勉強になったし、色々考えることも出来た。何より、保坂和志の小説が、もっと読みたくなった。それに何だか、小説も書きたくなってきたなぁ。いい本だ、本当。

アウトブリード

アウトブリード