chronic life

stay awake, stay asleep

仲居さんへ

僕にとって「中井英夫」とは、実在していた作家の中井英夫氏よりも、寧ろ『ザ・ヒヌマ・マーダー』の作者「仲居さん」のモデル人物であると云う印象の方が、正直強い。それと併せて、戦後探偵小説史に燦然と輝くアンチ・ミステリーの巨峰たる『虚無への供物』でさえ、僕にとっては前掲の『ザ・ヒヌマ・マーダー』のモデル作品であると云う認識の方が勝っている気がしてならない。だって、『天啓の器』はもう何度と無く読み返していると云うのに、『虚無への供物』は未だ一回しか読んだことないんだもの(笑)。何かすいません、宗像さんと天童さんに三笠さん――いや、笠井さんに竹本さんに宇山さん(笑)。
一寸だけ路線を戻すと、その中井氏がお亡くなりになったのが、10年前――1993年の12月10日だった。しかもそれは、氏の代表作である上記『虚無への供物』の開幕日なのだ。そのことは、同書の冒頭にはっきり「――一九五四年の十二月十日」と記述されている。そう、彼は自らの代表作の幕が開く正にその日に、自分の生涯そのものに幕を下ろしたことになる――と云う、かなり興味深い自体が起こっているのである。そして、その偶然と呼ぶには余りにも出来過ぎな事実に更なる深意を見出そうとしている試みの一つが、『天啓の器』と云う物語の大きな柱の一つになっていることは、最早疑う余地の無いことである。
あ、話が少し硬くなってしまった感があるので、最後は一寸お茶目な感じで。笠井さん、『瀕死の王』も『吸血鬼の精神分析』も『ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか? Ⅱ』も『黄泉屋敷事件』も『ヴァンパイヤー戦争』講談社文庫版も楽しみですが、一体『天啓の虚』はどうなっているんですか? 早く読みたいぬ〜ん!