嵐の足音が近付いてきている。或いは、雷鳴。
何だか、自分で自分を誘拐してしまったような気分だ。もう、どこにも帰る場所なんてないことくらい、ずっと前から判っていたことなのに。どうしてこんなに、涙が止まらないのだろう。
僕の考えていた「生きる目標」は凡て、「生きるための目標」でしかないことに、気付いてしまった。嗚呼、無情。
生と云うのは、降っている雨粒のようなものなのかも知れない、と想った。要は、雨雲から雫になって滴った瞬間が誕生の時で、地面やら人やらアスファルトやらに打ち当たり、雨粒としての個性を失くしてしまう瞬間が、死なのではないだろうかと――。と云うよう…
引用をストックしました
引用するにはまずログインしてください
引用をストックできませんでした。再度お試しください
限定公開記事のため引用できません。