柴崎友香『ショートカット』河出文庫

「じゃあ、飛行機の会社に電話して作ってもらい。そんなええとこなんやったら、みんなにも行ってもらったほうがええやろ。飛行機の会社の人にもそう言うたらええねん。これから大勢の人がコロコロに行きたがる時代が来るからって」
（中略）
「でも、どんな飛行機でも最初はそんな感じで始まるんかもしれへんで。今すぐニューヨーク行きたいって人がいっぱいおって、飛行機に乗るだけでニューヨークまで行けたら便利やなって考えた人がいてはったんやわ」（p.29）

同じ場所にいるだけでなにも言わなくてもわかることが、電話の向こうとこっちで別々の景色を見ながらいくらしゃべってもきっと伝わらないって、決定的にわかり始めていた。だけど、そのことを、電話をかけて、確かめたかった。電話の向こうの由史くんに伝えたかった。（p.84）

ショートカット (河出文庫)